SCBR工法によるプレテンション方式連結PC橋への桁架替工事における技術開発
阪和自動車道(特定更新等)松島高架橋他9橋橋梁更新工事
発注者:西日本高速道路株式会社
請負者:オリエンタル白石(株)・(株)IHIインフラ建設特定建設工事企業体
RC連続中空床版橋からSCBR工法によるプレテンション方式連結PC橋への桁架替え工事
工事概要
阪和自動車道の和歌山北IC~和歌山南SIC間に位置する松島高架橋を含む高架橋群は、昭和49年に供用が開始されています。ただし、この区間は、建設時に海砂が使用され、建設されたののが塩分量規制前でありコンクリート内部に塩分が残留していることや交通荷重による疲労等により、損傷が顕著になっていました。
本工事は、本区間の桁取替え工事です。現状の上下線4車線の総幅員を3回に分割し、交通規制期間中は縮小幅員で2車線規制による1方向2車線を、上下線で現状と同じく4車線を確保したなかでの狭隘工事スペースで桁架替え工事として施工しています。
図-1に本工事の工事全体概要図を、図-2に施工STEP概要図を示します。


本工事で開発・適用されている新技術・新工法
① 更なる施工合理化を図ったSCBR工法
当該の高架橋群の下部工は、幅員方向に2~4本の独立単柱型式の橋脚であるため、支点上に横梁を有するSCBR工法(Smart Connected Bridge)の採用により,支承個数の削減による低廉化ならびに既存橋脚の改修の最小化を図るとともに、従来、径間中央部に配置される中間横桁を省略し、かつ、間詰床版部に埋設型枠を使用することで、施工時の吊足場を不要として、更なる施工合理化を図っています。<特許:第5367297号,第6517123号>

② 狭小空間における横締めPC鋼材緊張
分割施工による工事期間において、一般交通供用時に4車線を確保するため、工事区域は極めて狭小となります。従来、横締めPC鋼材の緊張時の作業空間として1m程度を確保する必要があったが、本工事では、その作業空間の確保が困難であった。そこで、当該工事において、狭小スペース用の緊張ジャッキを開発しました。<特許:第7159417号>

③ 大規模地震(L2地震動)対応の仮設橋脚
本高架橋群の下部工は独立単柱型であるため、図-2のSTEP2やSTEP3においては、架替えの上部工や一般車両の交通荷重を、仮設橋脚で支持する必要がありました。架替えにおけるSTEP2やSTEP3の期間が長いことより、大規模地震に対しても安全性を確保することが必要となり、高い耐震性能を有し、かつ、組立解体が容易な、鋼製部材による仮設橋脚を開発しました。<特許:第7108108号>

④ 狭小幅員における一般車両の衝突時安全性を確保したハイブリッドスリムガード
工事時間中、狭小幅員の運用により、片側2車線を確保します。この時、不測の事態である工事規制区間内での一般供用車両の安全性を確保するため、従来と比較して、約50%の設置幅で、車両衝突に対する安全性を確保した仮設車両用防護柵「ハイブリッドスリムガード」を開発しました。<特許:第6804681号>
⑤ 自動矢印板システム
工事期間中、一般供用路線のシフト変更等に伴い、一般車両の誘導を目的に矢印板が設置されます。しかし、この矢印板設置は、高速道路を一般車両が供用している中で設置されるため、設置時に事故の発生が懸念されました。そこで、供用車線に侵入することがなく、この矢印板設置を遠隔地での一斉昇降が可能な自動化システムを開発しました。<特許:第7273380号>

⑥ 施工性・安全性ならびに正確性を向上させたループドライブワイヤーソー(駆動式)
既設橋梁撤去時、吊り上げや運搬が可能なように、既設橋梁を切断します。この切断は、従来、約3mごとに盛替えをしながらワイヤーソーにより切断していました。この盛替え作業を不要として安全性や施工性を向上させるとともに、狭小空間での切断直進性を向上させたループドライブワイヤーソー(駆動式)を開発しました。<特許:第7212905号>


なお、本工事は各所に投稿・発表しております。併せて、ご参照頂ければ幸いです。
- 土木施工 2021 Jan VOL.62 No.1
- 令和3年度土木学会全国大会第76回年次学術講演会
[新設および大規模改修時における橋梁計画] - プレストレストコンクリート 2021 Vol.63 No.5
- 橋梁と基礎 2022 Vol.56 No.1
- 道路 2022.03 Vol.972
- 第31回 プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム 2022.10
- 第22回 コンクリート構造物の補修,補強,アップグレードシンポジウム 2022.10
- 橋梁と基礎 2022 Vol.56 No.12
- コンクリート工学 2024 Vol62,No.2