高速道路に革新的な非鉄床版技術!炭素繊維複合ケーブルを用いた『MeLスラブ®』初導入
沖縄自動車道(特定更新等) 許田高架橋南他1橋床版取替工事(その2)
発注者:西日本高速道路株式会社
請負者:オリエンタル白石(株)・日本橋梁(株)特定建設工事共同企業体
工事概要
沖縄自動車道は高温多湿な亜熱帯地域に位置し、飛来塩分も内陸部にまで達するという厳しい腐食性環境に置かれています。さらに、その北部区間は、当時の慣行により脱塩処理が十分でない海砂がコンクリートに使用されており、鋼橋のRC床版では供用10年を経過した頃から劣化が顕著になっていました。中でも、許田高架橋は、塩害の影響を受けやすい沿岸部に位置しており、抜本的な対策として床版取替えを実施することとなりました。
本工事は、許田高架橋の中でも、横断勾配が逆転し滞水の可能性がある3径間(P12~P15)を対象に、非鉄床版であるMeLスラブでの床版取替を実施しました。

本工事で開発・適用されている新技術・新工法
① 更なる高耐久化を実現したMeLスラブ工法
沖縄自動車道の許田高架橋床版取替工事で初めて『MeLスラブ』が採用されました。本橋は、塩害劣化等により鋼材が激しく腐食していたことから抜本的な対策として、腐食しない材料を用いて床版取替を行いました。『MeLスラブ』は、腐食しない構造材料である炭素繊維複合材ケーブル(CFCC®)を緊張材として使用し、床版支間方向および橋軸方向の2方向にプレストレスを導入したプレキャストPC床版です。さらに、短繊維補強コンクリートを採用することで緊張材以外の補強材を削減し、コスト縮減を図りました。CFCC®は腐食しない材料であり、塩害環境でのかぶり厚の増加は必要ありません。また、完成時に金属を残さない定着構造を採用しています。これらにより、耐久性確保の確実性やLCCの低減の観点から、海岸付近や凍結防止剤が散布される地域などの厳しい塩害環境下での活用が期待されます。<特許:第6688441号>

② MeLスラブの架設
許田高架橋では、プレキャスト床版上面に孔を設けない構造を採用し、より高い耐久性を実現しました。床版上面に孔を設けない構造であるため、コの字型金具を開発し架設を実施しました。<特許出願中>

③ CFCCの緊張
CFCC材の緊張作業は、床版下面で行う必要がありますが、床版下面でのジャッキと吊り孔の位置合わせや吊り下げ空間の確保が困難でした。そこで、機動性に優れたジャッキ上面の空間が確保できる吊り下げ台を開発し緊張作業を実施しました。<特許出願中>

④ CFCCの解放装置
MeLスラブは、金具を全く使わない非鉄構造を採用しています。このため、一時的に鋼製の緊張架台で緊張力を支持しますが、グラウト硬化後には架台に作用する反力を解放し、グラウト定着へ移行させます。この時、静的に導入を可能とする油圧トルクレンチによる解放法を開発し解放を実施しました。<特許:第7201867号>

⑤ 横差しスタッドガン
橋面にスタッド孔を貫通させない構造を設けたことから、床版を架設する前にスタッドを先打ちする必要がありました。スタッドを先打ちした場合には、架設時に床版との干渉や床版スライドの影響によりスタッド孔を大きくしなければなりません。そこで、架設後にスタッドを溶殖できるスタッドガンを開発し施工しました。<特許出願中>
